Pro8.2 新機能 モーショントラッキング
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2016.4.22、Pro8 発売当初に2年をかけて無償追加されるとアナウンスされた新機能のひとつがモーショントラッキングがVer.8.20b312で実装されました。
モーショントラッキングとは、動きのある被写体の特定の部分に自動的に追従して[モザイク]などの[ビデオフィルター]のエフェクトを適用する機能で、今まで人物の顔にモザイクを掛ける場合はマスクパスを手動で移動させなければならなかったのがボタンひとつでモザイク追尾できるようになりますし、モザイク以外にもアイデア次第でかなり応用範囲が広い新機能だと思います。
モーショントラッキングの使い方
モーショントラッキングはマスクに実装されている機能なのでエフェクトの中をいくら探してもモーショントラッキングというエフェクトは存在しません。実際に使うには矩形作成や楕円作成などのパス作成して始めて使えるようになるので図のようにパスがないとトラッキングの項目すら表示されません。
パスを作成してトラッキングさせたい始点にタイムラインカーソルを移動させて赤色の枠線で囲んだボタンを押して表示される「順方向トラッキング」ボタン、またはオレンジ色の枠線で囲んだ「順方向トラッキング」のボタンをクリックすると解析が開始されます。尚、赤色の枠線で囲んだボタンで表示されるメニューはパスを選択してないと使用できません。
トラッキングの解析テストに2分20秒のMP4動画(1280×720)を使用して行ったんですが、解析時間が約2分40秒ほど、解析中のCPU使用率は intel Core i7 2600K で50%前後でした。解析中に数秒間フリーズするようなシーンがありましたので結構マシンパワーが必要な感じを受けました。
「中止」を押すとその地点までがトラッキングされます。
メニューにある「モーションパスの表示」にチェックを入れておくと動いた軌跡が分かります。
トラッキングに失敗したり、対象物が画面から消えてしまうと「トラッキングに必要な特徴を検出されませんでした。別のフレームからトラッキングしてください。」と表示されます。
トラッキングを開始するとシェープ1(※数値はパス数により異なる)以下の項目に自動でチェックが入ります。尚、トラッキングのキーフレームは1フレーム単位で打たれるのでキーフレーム正確に削除する場合はタイムスムールを拡大表示にして行わないと難しいです。
タイムラインカーソルの位置から順方向トラッキングのほかに「逆方向トラッキング」やフレーム単位でもトラッキングできます。
トラッキングのキーフレームの補間方法は直線(デフォルト)と固定のみでベジエには対応してません。というか1フレーム単位でキーフレームが打たれるので固定でも直線も違いがないんですけどねw。
トラッキングのキーフレームを削除するにはトラッキングの項目名の上で右クリックすると「トラッキングの値をクリア」から一括削除することができます。
オレンジ色で囲んだところをクリックするとトラッキングするパスの動きを位置、拡大・縮小、回転の中から選択できます。例えば位置のみを有効にした場合はトラッキング対象物が拡大したとしてもパスの大きさは変わらずに位置情報だけを追跡するという感じになるみたいです。
因みにすべての項目のチェックを外してトラッキングしようとすると図のように「すべてのパラメーターが間違っています。」と表示されてトラッキングできません。
トラッキングさせたパスの内側(外側)フィルター、または両方にフィルターを設定するとトラッキングされたパスの動きに合わせてフィルターも追従して移動させることができます。フィルターの設定はトラッキングする前でも後でもどちらでも結構です。
トラッキングの精度を上げるには
複数の異なる動画で色々と試してみましたが速い動きには付いていけないですし、一発でキレイにトラッキングできることはほぼありませんでした。またシーンが変わるところでは確実にトラッキングがズレてしまうのでVer.8.20b312の時点でのトラッキング精度は残念な感じです。そこでうまくトラッキングする方法がないか色々と試してみました。
まず、パスで囲む範囲によってかなりトラッキングの結果が変わります。例えば図のように風船の中心部分だけをマスキングするとトラッキングに必要な特徴を検出トラッキングできなくて終了することが多かったです。
このような場合はトラッキングの対象物とそれ以外のものが納まるようにパスで囲んでやると旨くいくことが多いようです。
トラッキングが対象物からズレた場合は解析を続行せずに一旦止めてからズレた位置に戻って、パスの位置を修正してから再度トラッキングを開始するようにした方が効率いいです。
ただ、パスを移動させるとトランスフォーム(位置)のキーフレームが打たれて先頭からトランスフォームによってアニメーションするようになります。移動量が少なくトラッキングに違和感がなければそのままでもいいんですが位置が大きく異なる場合は次章の「カットが変わる映像でも旨くトラッキングする方法」の動画を参考にトランスフォームにキーフレームを追加して対応して下さい。
真っ黒なシーンからはトラッキングできませんのでそのような時は明るいところから「逆方向トラッキング」をするといいと思います。
旨くトラッキングきない場合は一時的にカラー系のエフェクトを掛けてトラッキングし、トラッキングが済んだらカラー系のエフェクトを無効にするのもある程度有効なようです。図は鳥と水面をはっきりさせる為にネガ(左)を適用したものです。
尚、このテクニックにはカラー系のエフェクトをインフォメーションパレットの並び順をマスクより上位に配置することが重要です。
カットが変わる映像でも旨くトラッキングする方法
動画の方が説明が簡単なのでそちらを見てください。
モーショントラッキングで図形(矢印)を追尾
レイアウターで動かしたタイトルクリップ(テロップ)の追尾はエッジがハッキリしているのでほぼ完璧に出来そうな印象を受けました。ただ、これはあくまでもレイアウターで動かしたものを追尾するだけで動く物体を追尾するようなタイトルクリップは作れそうにないです。
ただマスクで作成した矢印などならサンプル動画のように追尾することが可能です。鳥の動きに追尾する下向きの矢印を作成しながら解説します。
矢印のパスを作成し、トラッキングさせたい領域に配置します。この時、最終的な矢印のサイズではなくトラッキングしやすいように大きめにして配置しておくとトラッキングしやすいようです。
矢印のサイズや角度を変更させたくない場合はトラッキングの設定を「位置」のみにしてトラッキングします。旨くトラッキングできない場合は「トラッキングの精度を上げるには」などを参考に修正します。
トラッキングが旨くいったらトランスフォームの先頭と後部に設定されているキーフレームを削除し、トランスフォームのチェックも解除してキーフレームを無効にします。これによりパスを動かしてもシェイプによるアニメーションがしなくなり、トラッキングのみの動きになりますのであとは自由に矢印の位置やサイズを調整すればOKです。
モーショントラッキングを使ってみた感想
まだ出来たてほやほやの機能なのでこれから熟成されていくとは思いますがVer.8.20b312の時点でのモーショントラッキングはイチイチな感じです。複数の異なる動画で試してみましたが鳥が飛び立つ瞬間などの速い動きにはほとんど付いていけないですし、一発でキレイにトラッキングできることはありませんでした。またシーンが変わるところでは確実にトラッキングがズレてしまいます。
また、今まではEDIUSではどんなに重たい作業をする場合でもカーソルが動かなくことは記憶になかったですがアップデート後はマスクを使ってない操作でも10秒程度のフリーズが時折発生するようになりました。現象的にはバックで鳴らしている音楽が止まるようなシステム全体がフリーズしているようなフリーズです。EDIUSが完全にフリーズするとシステムレポートの作成を促す画面が表示されますがそのようなフリーズは一度も起こってなくてしばらく経つと回復してました。
一番の気になったのが今までエフェクトなど一切設定していない動画(MP4)を配置しただけのタイムラインではタイムスラインカーソルを動かすとプレビューでもリアルタイムに表示されていたんですが、バージョンアップ後はタイムラインカーソルの動きにプレビューの映像が僅かに遅れるようになりました。尚、バージョンを落として検証するのが面倒だったのでサンプル動画ではレンダリング済みのものと比較しています。
あと、複数のパスを同時にトラッキングできるというのでやってみたんですがCore i7 2600K、Quadro 2000で劇重で正直使う気になれませんでした。尚、やり方は複数のパスを選択してメニューにある「順方向トラッキング」などの項目をクリックすると出来ます。
更に3分の動画クリップに適用したマスクをトラッキングする前とした後のものをユーザープリセットエフェクト化し、エクスポート後の容量を比較したら3KBだったのが219KBに増大してました。単位がキロバイトならまだ大丈夫だと思いますがこれが数百メガバイトなどになると経験上、EDIUSの起動・終了時に時間を要するようになるのでPro8.2にバージョンアップしてから急に起動・終了に要する時間が遅くなったと言う場合はこれが原因の可能性があります。
兎に角、軽かったEDIUSが重くなったのはいただけないので早急に対応して欲しいところです。尚、このページに書かれているような現象が全てに環境で起こる保証はありませんし、もしかしたら筆者の環境だけで起こっているのかも知れません。
2016/4/27追記
このフリーズ現象はWindows10では起こってない報告が縁側であったので筆者もWindwos10のサブ機(Core i5-2500K)にインストールして試したところ、フリーズは今のところ起きていません。よってWindows7だけで起こっている可能性がありますが詳細は不明です。
2016/11/12追記
Windows10Windows7を再インストールした後にEDIUS Pro 8.2だけインストールした状態でしばらく使っているんですが、今のところフリーズ現象が一切起きていません。Windows7を再インストールした後のことなのでNeo3.5との共存が原因だったかまでは分かりませんが事例だけ記載しておきます。